新NISAで損切りは必要?つみたて・成長枠別の判断基準と枠復活の仕組み

新NISAで損切り NISAや投資について

新NISAでの運用を始めたものの、予期せぬ相場の変動によって含み損を抱え、「今すぐ売却して損切りすべきか」と悩んでいる方は少なくありません。

特にSNSやニュースで「暴落」「新NISA損切り民」といった言葉を目にすると、不安はピークに達することでしょう。

しかし、感情に任せて売却ボタンを押す前に、一度立ち止まって考える必要があります。

投資において最も重要なのは、一時的な感情ではなく、論理的な判断基準を持つことです。

本記事では、新NISAにおける損切りの判断基準を、投資信託と個別株という商品の性質別に詳しく解説します。

さらに、損切りに伴う税制上のデメリット、精神的な負担を減らすためのマインドセット、そして含み損を逆手に取って非課税枠を復活させる「枠の圧縮」という裏ワザまで網羅しました。

正しい知識と戦略を身につけることで、市場の変動に左右されず、自身の資産と心の平穏を守り抜くことが可能になります。

まずは、あなたの保有資産がどのような状態にあるのかを冷静に見極めることから始めましょう。

■本記事のポイント

  1. 判断基準の違い: つみたて投資枠の「投資信託」は長期的な回復を待って放置すべきだが、成長投資枠の「個別株」は企業の将来性が崩れていれば損切りも検討する
  2. 制度上のデメリット: 新NISAでの損失は「損益通算」や「繰越控除」が一切できないため、課税口座での損切りよりも金銭的・税制的なダメージが大きいことを理解する
  3. メンタル管理: 経済合理性よりも心の平穏が優先。SNSの「損切り民」という煽りに惑わされず、夜ぐっすり眠れるリスク許容度までポジションを落とすことは恥ではない
  4. 転んでもただでは起きない: 含み損を利用してあえて売却・買い直しを行う「枠の圧縮(取得単価の引き下げ)」を行えば、生涯投資枠を節約して将来の非課税メリットを拡大できる

 

  1. 新NISAで損切りすべきか?判断基準は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で異なる
    1. つみたて投資枠の投資信託は基本的に放置が正解な理由
    2. 成長投資枠の個別株は回復の見込みがなければ損切りを検討
    3. 2025年の市場動向を踏まえた新NISAの損切り判断
  2. 精神的に限界なら「新NISAで損切り」も正解!心の平穏を守るための考え方
    1. 新NISA損切り民は自分だけではないと知る重要性
    2. 積立NISA損切りコピペやおじさん等のネットスラングに惑わされない
    3. 掲示板(5ch・なんJ)の煽りを無視して自分のルールを守る
  3. 新NISAで損切りする最大のデメリット「損益通算・繰越控除」の不可
    1. 課税口座との損益通算ができず税制上のメリットがない
    2. 損失の繰越控除ができないため翌年以降の利益と相殺不可
    3. NISAの損切り後に枠復活は翌年になる仕組みを理解する
  4. 【裏ワザ】新NISAで損切り?含み損を利用して「非課税枠」を圧縮する買い直し戦略
    1. 取得単価を下げて非課税保有限度額を有効活用する方法
    2. 買い直しをする際に注意すべき「同一日約定」の罠
    3. 戦略的な損切りは「失敗」ではなく「ポートフォリオの調整」
  5. 新NISAで損切りを2024年・2025年の暴落事例から学ぶ「売って後悔した人」の共通点
    1. 新NISAで大損したと感じる人の多くは短期視点
    2. 過去のデータから見る新NISAで損する確率と長期投資の優位性
    3. 暴落時にやってはいけないNG行動「積立停止」と「狼狽売り」
    4. 【まとめ】新NISAでの損切について

新NISAで損切りすべきか?判断基準は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で異なる

新NISAで損切りすべきか?判断基準は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で異なる

一口に「新NISAでの損切り」と言っても、保有している金融商品によってその判断基準は180度異なります。

すべての商品を一律に「長期保有すべき」あるいは「損切りすべき」と決めてしまうのは非常に危険です。

なぜなら、投資信託(インデックスファンド)と個別株では、リスクの性質や価格変動の要因が根本的に異なるからです。

投資信託は市場全体への分散投資ですが、個別株は一企業の経営状況に依存する「一点張り」に近い性質を持ちます。

両者を混同せず、それぞれの特性に合わせた冷静な対処を行うことが、資産を守るための第一歩です。

本章では、以下の3つの視点における具体的な対応方針を詳細に解説します。

  1. つみたて投資枠の投資信託への対応
  2. 成長投資枠の個別株への対応
  3. 2025年の市場動向を踏まえた判断

つみたて投資枠の投資信託は基本的に放置が正解な理由

つみたて投資枠の投資信託は基本的に放置が正解な理由

「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」などの優良なインデックスファンドに積立投資をしている場合、基本的には損切りを検討する必要はありません。

どのような暴落局面であっても、売らずに「放置(ガチホ)」し続けることが、統計的に最も合理的な選択肢となります。

理由は明確で、これらの商品は世界経済や米国経済全体に広く分散投資しており、資本主義経済が成長を続ける限り、長期的には株価の回復や上昇が期待できるからです。

過去の歴史を振り返っても、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックといった大暴落は何度もありました。

そのたびに株価は数十パーセント下落しましたが、数年というスパンで見れば必ず以前の高値を更新し、右肩上がりで成長を続けています。

一時的な下落に耐えきれずに売却してしまうと、その後の回復局面で得られるはずだった大きな利益を放棄することになります。

これを「稲妻が輝く瞬間を逃す」と表現することもありますが、相場の回復は突然やってくるため、常に市場に居続けることが重要なのです。

金融庁が公表しているデータにおいても、長期保有によるリスク低減効果が明確に示されています。

保有期間が5年程度では元本割れする可能性がありますが、20年以上の長期運用を行った場合、過去の実績ベースでは元本割れのリスクがゼロになり、年率2から8%程度の安定したリターン収束することが確認されています(出典:金融庁『NISA早わかりガイドブック』)。

つみたて投資枠での運用は、10年、20年という時間を味方につける手法です。

日々の値動きに一喜一憂せず、積立設定を維持したまま、静かに時が過ぎるのを待ちましょう。

「気絶投資法」と呼ばれるほど、何もしないことが最大の利益を生むケースが多いのがインデックス投資の特徴です。

成長投資枠の個別株は回復の見込みがなければ損切りを検討

成長投資枠の個別株は回復の見込みがなければ損切りを検討

一方で、成長投資枠で購入した「個別株」の場合は、投資信託とは全く異なる厳格な判断が求められます。

個別株は、その企業固有のリスク(倒産、不祥事、業績悪化など)を直接的に受けます。

インデックスファンドのように「待っていればいつか戻る」という保証はどこにもありません。

かつての名門企業であっても、時代の変化に対応できずに株価が低迷し続け、最終的には上場廃止や倒産に至るケースも存在します。

もし、保有している銘柄の株価が下落している場合、その要因を冷静に分析してください。

市場全体が暴落していることに引きずられているだけなら、回復の余地はあります。

しかし、決算発表で業績の下方修正が出た、競合他社にシェアを奪われている、不祥事が発覚したなど、企業の本質的な価値(ファンダメンタルズ)が毀損している場合は危険です。

「いつか戻るだろう」という根拠のない期待で塩漬けにすると、損失はさらに拡大する可能性があります。

含み損が拡大し続ける銘柄を持ち続けることは、資金効率の面でも大きなマイナスです。

見込みのない銘柄に資金を拘束されるよりも、早めに損切りをして現金化し、今後成長が見込める別の銘柄や、手堅い投資信託へ再投資する方が、資産全体の回復は早くなります。

個別株投資においては、「購入時のシナリオが崩れたら売る」というルールを徹底することが重要です。

例えば、「株価が購入価格から10%下がったら機械的に売る」「2期連続で減益なら売る」といった具体的な撤退ライン(損切りライン)を事前に決めておくことをおすすめします。

感情を排し、事実に基づいて冷徹に判断を下す勇気を持ってください。

2025年の市場動向を踏まえた新NISAの損切り判断

2025年の市場動向を踏まえた新NISAの損切り判断

2025年という年は、世界的な金融政策の転換点となる可能性があり、市場環境の変化を注視する必要があります。

米国をはじめとする主要国の中央銀行が金利政策を変更すれば、為替レート(円高・円安)や株価にダイレクトに影響を与えます。

特に、為替の影響を受けやすい輸出関連企業や、金利上昇が逆風となる不動産関連銘柄などを保有している場合は注意が必要です。

「新NISA 損切り 2025」と検索して不安になる前に、まずはご自身のポートフォリオを点検しましょう。

もし、現在の含み損が「市場全体の調整(セクターローテーションなど)」によるものであれば、慌てて売る必要はありません。

循環的な下落であれば、次の上昇サイクルで回復する可能性が高いからです。

一方で、構造的な逆風を受けている業界や銘柄であれば、一度ポジションを解消して現金を確保するのも戦略の一つです。

また、新NISA開始から1年が経過し、非課税枠の残高や含み益の状況も人によって差が開いてくる時期です。

2024年の上昇相場で得た含み益という「クッション」がある人は多少の下落にも耐えられますが、高値掴みをして含み損スタートとなった人は精神的な余裕がありません。

自分のリスク許容度を超えていると感じるなら、市場動向にかかわらず、ポジションを少し落として(一部売却して)リスク量を調整することも検討してください。

重要なのは、長期的な成長ストーリーが崩れていないか、そして自分自身がその変動に耐えられるかという2点です。

精神的に限界なら「新NISAで損切り」も正解!心の平穏を守るための考え方

精神的に限界なら「新NISAで損切り」も正解!心の平穏を守るための考え方

投資の世界では「感情を捨てること」が推奨されますが、私たちは人間であり、感情を完全に排除することは不可能です。

どれほど理論的に「ホールドが正解」と分かっていても、含み損の金額を見るたびに胃が痛くなり、仕事や家庭生活に支障が出るようであれば、それは投資として本末転倒です。

経済合理性よりも優先すべきは、あなた自身の心身の健康です。

精神的に限界を感じているなら、一度損切りをしてポジションを解消し、リセットすることも立派な防衛策と言えます。

行動経済学には「プロスペクト理論」という考え方があり、人は「利益を得る喜び」よりも「損失を被る痛み」を約2倍から2.5倍も強く感じるとされています。

つまり、10万円儲かった時の嬉しさよりも、10万円損した時の悲しみの方が圧倒的に深いのです。

この心理的な特性を理解しておくだけでも、自分の感情を客観視する助けになります。

ここでは、投資を長く続けるために必要なメンタル管理の視点を、以下の3つのポイントから深掘りして解説します。

  1. 損切り民は自分だけではないという事実
  2. ネットスラングへの対処法
  3. 掲示板との適切な距離感

新NISA損切り民は自分だけではないと知る重要性

新NISA損切り民は自分だけではないと知る重要性

X(旧Twitter)などのSNSで「新NISA損切り民」というハッシュタグや投稿を見ると、まるで自分だけが投資に失敗し、周囲の人々は皆儲かっているかのような錯覚に陥ることがあります。

しかし、これはSNS特有のバイアス(偏り)によるものです。

SNSでは、大きな利益を出した「勝ち組」の報告ばかりが拡散されやすく、損失を出して苦しんでいる大多数の声は表に出にくい傾向があります。

実際には、暴落局面において不安を感じ、売却を検討したり実際に損切りを行ったりする投資家は非常に多く存在します。

プロのファンドマネージャーでさえ、すべての銘柄で勝つことは不可能であり、損切りは日常的な業務の一部です。

今回、もしあなたが損切りを選んだとしても、それは恥ずべき失敗ではありません。

「自分のリスク許容度を超えた投資をしてしまった」という事実に気づき、修正するためのアクションを起こしたと捉えるべきです。

この経験は、将来再び投資を行う際に、より適切な金額や銘柄選定をするための貴重な「授業料」となります。

市場から完全に退場(投資をやめてしまうこと)しない限り、何度でもやり直すチャンスはあります。

孤独感に苛まれる必要はありません。

今は次のステップへ進むための準備期間だと考えましょう。

積立NISA損切りコピペやおじさん等のネットスラングに惑わされない

積立NISA損切りコピペやおじさん等のネットスラングに惑わされない

インターネット上の掲示板やSNSには、「積立NISA損切りおじさん」といったキャラクターや、損失を出した初心者を揶揄するような「コピペ(定型文)」が多数存在します。

これらは、他人の不幸を面白おかしくコンテンツ化して承認欲求を満たそうとする一部のユーザーによって作られたものであり、真に受ける価値は一切ありません。

彼らはあなたの資産を守ってはくれませんし、損失を補填してくれるわけでもありません。

こうした煽り言葉を目にすると、「馬鹿にされたくない」「意地でも持ち続けなければ」という感情が湧き上がり、冷静な判断ができなくなる恐れがあります。

あるいは逆に、「やっぱり投資なんてやるんじゃなかった」と自暴自棄になってしまうかもしれません。

しかし、投資はあくまで自分自身の人生を豊かにするための手段であり、他人に評価されるために行うものではないはずです。

「夜ぐっすり眠れるポジション(金額)」まで投資額を減らしたり、一度現金化して相場が落ち着くのを待ったりすることは、決して「負け」ではありません。

顔の見えない匿名の他人の言葉よりも、自分自身の生活と心の平穏を最優先にしてください。

自分のルールで動くことこそが、自立した投資家の姿勢です。

掲示板(5ch・なんJ)の煽りを無視して自分のルールを守る

掲示板(5ch・なんJ)の煽りを無視して自分のルールを守る

「新NISA損切り なんJ」「新NISA損切り 5ch」などのキーワードで検索し、掲示板の情報を参考にしようとする人もいるでしょう。

確かに掲示板は情報のスピードが早く、有益な視点が得られることもあります。

しかし、相場が大きく動いている時ほど、掲示板は極端な悲観論や根拠のない煽りで溢れかえります。

「もう終わりだ」「靴磨きの少年が?」「情弱は養分」といった強い言葉の羅列は、読んでいるだけで精神力を削られます。

メンタルが弱っている時にこうした情報に触れ続けると、恐怖心が増幅され、「狼狽売り(パニック売り)」を引き起こす原因になります。

狼狽売りとは、論理的な理由ではなく、恐怖から逃れるために底値付近ですべてを投げ売ってしまう行為であり、投資において最も避けるべき失敗の一つです。

相場が荒れている時こそ、スマホやPCから離れ、情報を遮断する「デジタルデトックス」をおすすめします。

あるいは、信頼できる書籍や公的機関のデータを読み返し、自分がなぜその商品に投資したのかという原点に立ち返る時間を作りましょう。

ノイズを遮断し、自分の内なる声と向き合うことで、本来の投資目的を再確認できるはずです。

新NISAで損切りする最大のデメリット「損益通算・繰越控除」の不可

新NISAで損切りする最大のデメリット「損益通算・繰越控除」の不可

新NISA口座で商品を売却する前に、必ず理解し、納得しておかなければならないのが税制上のデメリットです。

NISAは「利益が非課税になる」という強力なメリットがある反面、「損失が出た時の救済措置がない」という厳しい側面を持っています。

通常の課税口座(特定口座・一般口座)であれば利用できる損失カバーの仕組みが、NISAでは一切使えません。

この点を知らずに安易に損切りを行うと、金銭的な損失だけでなく、税制面でも「踏んだり蹴ったり」の状態になりかねません。

ここでは、新NISA特有のルールについて、以下の3点から具体的かつ詳細に解説します。

  1. 損益通算ができない仕組み
  2. 繰越控除が適用されない問題
  3. 非課税枠の復活タイミング

課税口座との損益通算ができず税制上のメリットがない

課税口座との損益通算ができず税制上のメリットがない

通常、特定口座などの課税口座で株式投資を行っている場合、「損益通算」という仕組みを利用できます。

これは、ある銘柄で出た利益と、別の銘柄で出た損失を相殺し、その差額に対してのみ税金がかかるようにする制度です。

例えば、A株で20万円の利益、B株で20万円の損失が出たとします。

特定口座同士であれば、プラス20万円とマイナス20万円で利益はゼロとなり、税金は発生しません(既に徴収されている場合は還付されます)。

しかし、新NISA口座で発生した損失は、税務上「なかったもの」として扱われます。

仮に特定口座のA株で20万円の利益が出ており、新NISA口座のB株で20万円の損切りをしたとしましょう。

この場合、損益通算はできないため、特定口座の利益20万円に対して約20%(約4万円)の税金がそのままかかります。

トータルの資産はプラスマイナスゼロなのに、税金分だけ手取りが減ってしまうのです。

このように、新NISAでの損切りは「単にお金が減る」だけでなく、「節税のチャンスも捨てる」ことになります。

損失を確定させることの代償が、課税口座よりも大きいことを十分に認識しておく必要があります。

損失の繰越控除ができないため翌年以降の利益と相殺不可

損失の繰越控除ができないため翌年以降の利益と相殺不可

損益通算と同様に重要なのが「繰越控除」です。

課税口座では、その年の損失を確定申告することで、最大3年間にわたって損失を繰り越すことができます。

今年大きな損をしても、来年や再来年に出た利益と相殺して税金を減らせるため、負けを取り返す際の税負担を軽くできるのです。

しかし、新NISA口座の損失には、この繰越控除も適用されません。

新NISAで100万円の損失を出して撤退し、翌年に特定口座で100万円の利益を出したとしても、その100万円の利益には容赦なく課税されます。

つまり、新NISAでの失敗は、税制上「挽回が効かない失敗」として扱われるのです。

「損切りしてスッキリしたい」という気持ちは理解できますが、それが経済的にどれほどの不利益をもたらすかを天秤にかける必要があります。

もし回復の可能性が少しでもあるなら、非課税期間が無期限であることを活かし、じっくりと持ち続けてプラスに戻るのを待つ戦略(塩漬けからの生還)も、NISAにおいては合理的な選択肢となり得ます。

NISAの損切り後に枠復活は翌年になる仕組みを理解する

NISAの損切り後に枠復活は翌年になる仕組みを理解する

新NISAの制度改正により、商品を売却すると、その商品を購入した際の「簿価(取得価格)」分の非課税枠(生涯投資枠)が再利用できるようになりました。

これは旧NISAにはなかった大きな改善点ですが、注意すべきは枠が復活するタイミングです。

売却してすぐに枠が空くわけではなく、実際に枠が復活するのは「売却した翌年の1月1日」となります。

例えば、2024年の暴落局面で慌てて商品を売却し、底値を確認してからすぐに買い戻そうとしても、その年の非課税枠(年間投資枠)を使い切っていれば、NISA口座での再購入はできません。

翌年まで待つか、課税口座で購入するしかなくなります。

このタイムラグの間に相場が急回復してしまうと、非課税で利益を得るチャンスを逃すことになります。

損切り後の資金をどう動かすか、再エントリーのタイミングをどうするかを考える際は、この「翌年復活」というルールを計算に入れておくことが不可欠です。

年間投資枠に余裕がある場合は別ですが、枠をギリギリまで使っている人は特に注意が必要です。

【裏ワザ】新NISAで損切り?含み損を利用して「非課税枠」を圧縮する買い直し戦略

【裏ワザ】新NISAで損切り?含み損を利用して「非課税枠」を圧縮する買い直し戦略

ここまでは損切りのネガティブな側面や守りの姿勢について解説してきましたが、ここでは視点を変えて、含み損を利用した攻めの戦略を紹介します。

それが「枠の圧縮(非課税枠のロンダリング)」と呼ばれるテクニックです。

これは、含み損が出ている銘柄を一度売却し、すぐに買い直すことで、生涯投資枠(最大1,800万円)を安く消費し、将来使える枠を増やすという方法です。

特に、将来的に1,800万円の枠をすべて使い切る予定のある方にとっては、非常に有効な戦略となり得ます。

以下の3つのポイントから、その仕組みと注意点を解説します。

  1. 取得単価を下げるメリット
  2. 同一日約定の注意点
  3. ポートフォリオ調整としての損切り

取得単価を下げて非課税保有限度額を有効活用する方法

取得単価を下げて非課税保有限度額を有効活用する方法

具体的な数字を使ってシミュレーションしてみましょう。

あなたが成長投資枠で、ある銘柄を100万円分購入したとします。

この時点で、生涯投資枠1,800万円のうち、100万円分を消費しています(残り1,700万円)。

その後、株価が暴落し、評価額が50万円(半値)になってしまいました。

ここで、この銘柄を一度売却し、すぐに50万円で買い直したとします。

すると、新NISAの生涯投資枠の計算は「簿価(買付額)」ベースで行われるため、新たに消費される枠は50万円となります。

売却した当初の100万円分の枠は翌年に復活するため、結果として保有している株数は変わらないまま、消費している生涯投資枠を100万円から50万円へと「圧縮」できたことになります。

項目 そのまま保有 買い直し(枠圧縮)実行後
保有株数 変わらず 変わらず
現在の評価額 50万円 50万円
消費している生涯投資枠 100万円 50万円(実質的に枠が空く)
メリット 手間がかからない 将来使える非課税枠が増える
デメリット 特になし 手数料がかかる場合がある

将来的に使える非課税枠が50万円分増えるため、その分だけ他の優良な商品に追加投資することが可能になります。

この銘柄が将来的に値上がりすると確信しているなら、枠を節約しつつリターンを最大化できる賢い方法と言えるでしょう。

買い直しをする際に注意すべき「同一日約定」の罠

買い直しをする際に注意すべき「同一日約定」の罠

この「枠圧縮」戦略を実行する際には、絶対に犯してはならないミスがあります。

それは「同一日に同じ銘柄を売買してしまうこと」です。

株式取引のルール上、同じ日に同一銘柄を売って買い戻した場合、取得単価は「その日の売買の平均値」で計算されてしまいます。

これでは、せっかく安値で買い直しても、帳簿上の取得単価が下がらず、枠を圧縮する効果が得られません。

確実に枠を圧縮するためには、売却した日の「翌営業日以降」に買い直す必要があります。

デイトレードのようにその日のうちに売買を完結させようと焦ってはいけません。

また、投資信託の場合は、注文してから約定(取引成立)するまでに数日のタイムラグが発生します。

さらに、売却から買い付けまでの間に基準価額が変動してしまう「価格変動リスク」も負うことになります。

売った翌日に急騰してしまい、高く買い戻す羽目になる可能性もゼロではありません。

この戦略はあくまで「株価が低迷している時期」に、余裕を持って行うべきものです。

戦略的な損切りは「失敗」ではなく「ポートフォリオの調整」

戦略的な損切りは「失敗」ではなく「ポートフォリオの調整」

恐怖心から狼狽して売るのと、枠の効率化や資産配分(ポートフォリオ)のリバランスのために売るのとでは、行動の意味合いが全く異なります。

前者は感情に負けた結果の「敗北」ですが、後者は将来の利益を見据えた「戦略的な調整」です。

特定の銘柄の比率が高くなりすぎた場合や、含み損を利用して枠を整理する場合など、意図を持った売却は投資において不可欠なプロセスです。

損切りを「過去の失敗の確定」と捉えると辛くなりますが、「より良いポートフォリオを作るためのメンテナンス作業」と再定義してみてはいかがでしょうか。

植物を育てる際に、枯れた枝を剪定(せんてい)して全体の栄養を行き渡らせるのと同じです。

悪い部分を切り捨て、良い部分に資金を集中させることで、資産全体を健全に保つことができます。

視点を変えることで、損切りという行為に伴う心理的な痛みを和らげ、冷静な行動が可能になります。

新NISAで損切りを2024年・2025年の暴落事例から学ぶ「売って後悔した人」の共通点

新NISAで損切りを2024年・2025年の暴落事例から学ぶ「売って後悔した人」の共通点

歴史は繰り返します。

投資の世界において、この格言ほど真実味を帯びているものはありません。

過去のあらゆる暴落局面において、多くの個人投資家が恐怖に駆られて市場から去り、その後に訪れた回復局面での利益を逃してきました。

直近の2024年の下落局面や、今後想定される2025年の変動も、10年後から振り返れば「絶好の買い場」だったと評価される可能性が高いでしょう。

先人たちの失敗事例を知り、同じ轍(てつ)を踏まないように準備することが、あなたの資産を守る盾となります。

ここでは、以下の3つのポイントから、長期投資における成功の鍵を解説します。

  1. 短期視点の弊害
  2. 長期投資のデータ
  3. 積立停止と狼狽売りのリスク

新NISAで大損したと感じる人の多くは短期視点

新NISAで大損したと感じる人の多くは短期視点

Google検索などで「新NISA 大損」「新NISA 失敗」と調べている人の多くは、投資期間が数ヶ月から1年程度と極めて短い傾向があります。

株式市場において、1年という期間は瞬きするような一瞬に過ぎません。

短期的には、政治情勢や災害、投資家の心理状態によって、株価は30%や50%暴落することも珍しくありません。

しかし、これらはあくまで一時的なノイズです。

投資を開始して間もない時期にマイナス評価になると、「自分には才能がない」「騙された」と感じてしまうのは無理もありません。

ですが、投資の成果は10年、15年、20年という長い時間をかけて結実するものです。

種を撒いてすぐに芽が出ないからといって、土を掘り返してしまう農家はいません。

今の含み損は、長い成長プロセスの一部に過ぎないと捉えましょう。

短期的な値動きに一喜一憂する「投機(ギャンブル)」的な思考から、企業の成長や経済の拡大に資金を投じる「投資」的な思考へと切り替えることが重要です。

過去のデータから見る新NISAで損する確率と長期投資の優位性

過去のデータから見る新NISAで損する確率と長期投資の優位性

「本当に戻るのか不安だ」という方は、客観的なデータに目を向けてみましょう。

金融庁が作成した『NISA早わかりガイドブック』には、過去の市場データに基づいたシミュレーション結果が掲載されています。

それによると、積立投資を5年間しか行わなかった場合、元本割れする確率はそれなりに存在します。

しかし、保有期間が20年を超えると、過去の実績では元本割れしたケースは存在せず、すべてのケースでプラスのリターンが得られています(PRESIDENT Growthより)。

もちろん「過去の実績が将来を保証するものではない」という注釈はつきますが、資本主義経済が続く限り、人類は生産性を高め、経済規模を拡大させようと努力し続けます。

インデックス投資とは、この人類の進歩にお金を乗せる行為です。

現在の含み損は、長期的な上昇トレンドの中での「一時的な調整局面」である可能性が極めて高いのです。

統計データを信じ、時間を味方につけて資産が育つのをじっくりと待つ忍耐力こそが、投資成功の最大の要因です。

暴落時にやってはいけないNG行動「積立停止」と「狼狽売り」

暴落時にやってはいけないNG行動「積立停止」と「狼狽売り」

暴落時に投資家が犯しやすい最大のミス、それは「積立を停止すること」と「底値で狼狽売りすること」です。

株価が下がっている局面は、見方を変えれば「バーゲンセール」です。

スーパーでお肉や野菜が半額になっていれば喜んで買うのに、株価が安くなると買うのをやめてしまうのは矛盾しています。

定額積立投資(ドル・コスト平均法)を行っている場合、株価が下がれば下がるほど、同じ金額でより多くの口数(株数)を購入することができます。

安値でたくさんの量を仕込んでおくことで、将来価格が元に戻った時に、爆発的な利益を生み出すことができるのです。

ここで恐怖に負けて積立を止めてしまうと、この「安く仕込むチャンス」を自ら放棄することになります。

さらに、底値で全て売却してしまうのは、資産形成における最悪のシナリオです。

下落時こそ、歯を食いしばって淡々と積立を継続してください。

「暴落時は口数を稼ぐボーナスタイム」とポジティブに捉え直すことで、握力を強めることができるはずです。

【まとめ】新NISAでの損切について

最後に本記事で重要なポイントをまとめます。

新NISAでの損切り判断は一律ではなく、「商品(投信か個別株か)」によって全く異なる
つみたて投資枠(インデックス投信)は、世界経済の成長を信じて「放置(ガチホ)」が鉄則
成長投資枠(個別株)は、企業の成長シナリオが崩れていれば傷が浅いうちに「損切り」が必要
今の含み損の原因が「市場全体の一時的な下落」か「その企業特有の不調」かを見極める
経済合理性よりも「心の平穏」が最優先。夜も眠れないほどのストレスなら売却してリセットも正解
SNSの「損切り民」という煽りや、掲示板の嘲笑はノイズに過ぎないため無視する
新NISAの損切り最大のデメリットは、課税口座(特定口座)との「損益通算」が一切できないこと
損失を確定申告しても「繰越控除(3年間)」が使えないため、税制上の救済措置はない
売却しても非課税枠(年間投資枠)が復活するのは「翌年の1月1日」である点に注意する
暴落時に恐怖に負けて「積立停止」や「底値での狼狽売り」をすることは、最大の機会損失になる
下落局面は「安く多くの口数を買えるバーゲンセール」であり、積立継続が将来の利益を生む
含み損を利用して一度売り、安く買い直す「枠の圧縮」を使えば、生涯投資枠を節約できる
買い直し戦略を行う際は、取得単価が平均化されないよう必ず「翌営業日以降」に注文する
過去のデータでは、20年以上の長期保有を行うことで元本割れリスクは極めてゼロに近づく
一度の損切りは人生の失敗ではない。その経験を糧にして市場から退場しないことが資産形成の鍵