「新NISAの生涯投資枠は夫婦合わせて3,600万円」。
この数字を見て、「自分たちもこの枠を使い切れば、老後不安や教育費の問題を一気に解決できるのではないか」「あわよくばFIRE(早期リタイア)も夢ではない」と考えているご夫婦は多いはずです。
しかし、3,600万円という金額は決して小さくありません。
無計画に進めれば、日々の生活が圧迫されたり、思わぬ贈与税のリスクに直面したりする可能性もあります。
この記事では、夫婦で新NISAの枠を最大限に活用するための具体的なシミュレーションから、贈与税を回避する正しい資金管理、そして運用終了後の出口戦略までを徹底解説します。
夫婦で協力して資産形成のゴールを目指すためのロードマップとしてご活用ください。
■本記事のポイント
- 最短5年から堅実30年まで、家計に合った現実的なシミュレーションと積立計画がわかります
- 夫婦間の資金移動で税務署に指摘されないための「110万円の壁」対策と正しい管理法を解説しています
- 証券会社を「まとめる・分ける」判断基準や、夫婦だからこそ可能な「コア・サテライト戦略」を提案しています
- 資産を寿命まで持たせる「4%取り崩しルール」や、離婚・相続時の資産の扱いまで網羅しています
【目標設定と計画】新NISAを夫婦で3600万円を達成するためのロードマップ

新NISAを夫婦で活用する最大の利点は、世帯単位での非課税枠が単独利用時の2倍、つまり3,600万円になる点です。
しかし、ただ漠然と積み立てるだけでは、ゴールの見えないマラソンと同じで長続きしません。
まずは、この3,600万円という枠を埋め切ることで、将来的にどれほどの資産規模になるのか、複利効果のポテンシャルを数字で把握しましょう。
そして、現在の世帯年収やライフステージに合わせ、「いつまでに」「月いくら」埋めるかという現実的なロードマップを描きます。
ここでは、単なる計算上の数字だけでなく、生活実感に近いシミュレーションを行うことで、「夢」と「現実」の両面から夫婦の資産形成のゴールを明確にします。
1人1800万円×2人で3600万円の非課税枠が生む複利効果

新NISAの生涯投資枠(非課税保有限度額)は、1人あたり1,800万円です。
夫婦それぞれが新NISA口座を開設すれば、世帯合計で最大3,600万円の元本を非課税で運用可能です(2026年1月時点)。
仮にこの3,600万円を年利5%(世界株式の過去平均的なリターンを目安)で運用できた場合、資産は単なる貯金と比較して劇的に増加します。
運用期間ごとの資産推移目安は以下の通りです。
| 運用期間 | 元本 | 運用益(年利5%) | 資産合計 |
|---|---|---|---|
| スタート時(投資完了) | 3,600万円 | 0円 | 3,600万円 |
| 10年放置後 | 3,600万円 | 約2,264万円 | 約5,864万円 |
| 20年放置後 | 3,600万円 | 約5,953万円 | 約9,553万円 |
| 30年放置後 | 3,600万円 | 約1億1,966万円 | 約1億5,566万円 |
※上記は一括投資後の放置を想定した簡易シミュレーションであり、将来の成果を保証するものではありません。
特筆すべきは「税金の差」です。
通常の課税口座(特定口座)であれば、運用益に対して約20.315%の税金がかかります。
例えば30年後の運用益約1.2億円に対しては、約2,400万円もの税金が差し引かれます。
しかし、新NISAであれば、この約2,400万円がまるごと手元に残ります。
高級車数台分、あるいは地方のマンション一室分に相当する金額が「制度を使うだけ」で得するのです。
この圧倒的なメリットこそが、夫婦で新NISAに取り組むべき最大の理由です。
(出典:金融庁『新しいNISA』)
最短5年で埋めるか長期で積立するか?パターン別シミュレーション

3,600万円の枠を埋めるスピードによって、最終的な資産額や家計への負担感は全く異なります。
ここでは「最速」「中間」「堅実」の3つのパターンを比較し、自分たちのライフスタイルに合ったペースを見つけましょう。
1. 最速5年パターン(FIRE・早期リタイア志向向け)
積立額: 夫婦合計 月60万円(年720万円)
特徴: 新NISAの年間投資枠(360万円×2人)をフル活用し、最短5年で枠を埋め切ります。
メリット: 元本が早期に積み上がるため、複利効果を最大化できます。
20年後の資産期待値は最も高く、40代・50代でのFIREも視野に入ります。
注意点: 相当な入金力が必要です。
世帯年収1,200万円以上でないと生活が破綻するリスクがあります。
今の生活を極限まで切り詰める覚悟が問われます。
2. 堅実15年パターン(教育費とのバランス重視向け)
積立額: 夫婦合計 月20万円(年240万円)
特徴: 共働きパワーカップルであれば、ボーナス併用などで現実的に捻出可能なラインです。
メリット: 児童手当や住宅ローン控除の還付金などをうまく組み込めば、生活水準を極端に落とさずに継続できます。
15年後(例:40代後半から50代前半)に枠が埋まり、老後に向けた盤石な体制が整います。
3. 長期30年パターン(無理なく老後資金確保向け)
積立額: 夫婦合計 月10万円(年120万円)
特徴: 月5万円ずつ出し合う形です。
メリット: 子どもの教育費ピーク時や住宅購入時でも、家計への圧迫感が少なく、積立停止のリスクを最小限に抑えられます。
注意点: 複利効果が後半まで効きにくいため、最終的な資産額は最速パターンより劣ります。
しかし、精神的な余裕は最も大きいです。
重要なのは「隣の芝生を見ない」ことです。
SNSでは「最短5年で埋めた!」という声が目立ちますが、それに焦って無理な計画を立て、途中で積立を解約してしまっては本末転倒です。
自分たちのペースで「完走」することに価値があります。
現在の世帯年収と貯蓄額から逆算する現実的な月額設定

いきなり上限いっぱいの投資を目指すと、現在の生活が破綻するリスクがあります。
適切な投資額を決めるには、家計の現状把握から始めます。
以下のステップで計算してみましょう。
Step 1:生活防衛資金を確保する
投資はあくまで「余剰資金」で行うのが鉄則です。
病気、失業、災害などのトラブルに備え、生活費の6ヶ月分から1年分を「生活防衛資金」として銀行預金に残します。
例:月々の生活費が30万円の夫婦なら、180万円から360万円は現金のまま確保します。
これには手を付けません。
Step 2:数年以内に使うお金を分ける
3から5年以内に予定されている大きな出費(結婚式、車の買い替え、住宅の頭金、子どもの入学金など)も、投資には回さず現金で確保します。
NISAはいつでも売却できますが、使いたい時期に暴落している可能性があるからです。
Step 3:残りを投資可能額とする
「手取り月収」から「生活費」と「予備費」を引いた額が、純粋な投資余力です。
計算式: 手取り月収 - (固定費 + 変動費 + 毎月の貯金目標) = 投資可能額
もし計算結果が目標額に届かない場合は、「通信費の見直し(格安SIMへ変更)」「保険の見直し(掛け捨てへ変更)」「サブスクの整理」など、固定費の削減から着手します。
生活レベルを下げずに固定費を下げるのが、入金力を高める最短ルートです。
教育費や住宅ローンと両立させる入金力の維持方法

3,600万円への道のりは長距離走です。
途中で必ず、「教育費のピーク」や「住宅購入」といった大きな支出の波が訪れます。
これらのライフイベントと投資を両立させるためのテクニックを紹介します。
テクニック1:積立額の柔軟な変更
新NISAは、ネット証券であればWeb上から簡単に積立額を変更できます。
「子どもが大学にいる4年間だけは月額を半分にする」「昇給したらその分を増額する」といった調整は自由自在です。
「一度決めた額は絶対に変えてはいけない」と思い込む必要はありません。
テクニック2:ボーナス設定の活用
毎月の給与からは生活費で手一杯という場合、年2回のボーナス月だけ積立額を増やす「ボーナス設定」が有効です。
ただし、ボーナスは景気変動でカットされるリスクもあるため、ボーナス全額を投資に回すのではなく、半分は現金貯蓄に回すなどのバランス感覚が大切です。
テクニック3:住宅ローン繰り上げ返済との天秤
「住宅ローンを早く返すべきか、投資に回すべきか」は永遠のテーマです。
判断基準の一つは「金利差」です。
住宅ローン金利が0.5%(変動金利)で、投資の期待利回りが5%なら、数字上は投資に回した方が資産は増えます。
手元の現金を繰り上げ返済して流動性を失うよりも、NISAで運用しながら、いざという時は売却できる状態で持っておく方が、家計のリスクヘッジになるという考え方もできます。
【口座開設と税金】新NISAを夫婦で3600万円!証券会社の選び方と絶対に避けるべき贈与税リスク

計画が定まったら、次は実行のための環境づくりとルール設定です。
ここで多くの夫婦が直面するのが「どこの証券会社を使うか」という選択と、「夫婦間のお金の移動」に関する税金の問題です。
特に、夫婦間であっても安易な資金移動は贈与税の対象となるリスクがあります。
将来、資産が大きくなった時に税務調査で指摘され、多額の追徴課税を受けないよう、正しい知識で武装しましょう。
新NISAを夫婦でまとめるメリットと管理の効率化

夫婦で同じ証券会社(例:楽天証券、SBI証券、マネックス証券などの主要ネット証券)を利用することには、多くのメリットがあります。
1. 管理コストの削減
操作画面やアプリの使い勝手が同じであれば、夫婦間で教え合うことができます。
「積立設定の変更方法がわからない」「税金の書類はどこで見られる?」といった疑問も、片方が理解していれば即座に解決します。
2. 家族向けサービスの活用
一部の証券会社では「家族プログラム」のようなサービスを提供しています。
家族の口座を登録することで、世帯全体の資産推移をまとめて把握できたり、家族間の資金振替がスムーズになったりする機能があります。
3. ポイント経済圏の統一
夫婦で同じ「経済圏」にまとめることで、ポイント獲得効率が上がります。
例えば、夫婦ともに楽天カードで積立を行えば、貯まった楽天ポイントを普段の買い物や次回の投資に無駄なく消費できます。
「ポイント分散による失効」を防げるのも地味ながら大きなメリットです。
リスク分散やポイント上限を考慮した使い分けの判断基準

一方で、あえて夫婦で別々の証券会社(例:夫はSBI証券、妻は楽天証券)を選ぶ戦略もあります。
1. システムリスクの分散
特定の証券会社で大規模なシステム障害が起きた際、夫婦ともに同じ会社だと、世帯全員が資金を動かせなくなるリスクがあります。
口座を分けておけば、緊急時に片方の資産で対応することが可能です。
2. クレカ積立のポイント上限枠の最大化
クレジットカード積立によるポイント付与には、カードごとに上限(例:月10万円まで)があります。
夫婦で同じカードを持つ(家族カードなど)場合、枠を共有してしまうケースもあれば、個別に枠を持てるケースもありますが、全く別の証券会社とカードを使えば、確実にそれぞれの「ポイント付与枠」をフル活用できます。
判断基準のヒント:
手間を減らしたい派: 同じ証券会社で統一
1ポイントでも多く取りたい・リスク管理重視派: 別々の証券会社
新NISAで贈与税がバレるケースと年間110万円の壁

「夫婦なのだから財布は一緒」という感覚は、日常生活では当たり前でも、税務上は通用しません。
特に、専業主婦(夫)やパート勤務で収入が少ない配偶者のNISA枠を、世帯主の収入で埋める場合は要注意です。
贈与税には「年間110万円」の基礎控除があります。
これを超えて資産を無償で渡すと、贈与税の申告と納税が必要になります。
危険なケース:夫の口座から妻の証券口座へ直接振込
例えば、妻のNISA枠を最速で埋めるために、夫が年360万円を妻の証券口座に入金したとします。
これは「夫から妻へ360万円の贈与があった」とみなされます。
贈与額:360万円
基礎控除:110万円
課税対象:250万円
贈与税額:約19万円(税率15%-控除額)
「バレないだろう」と思うのは危険です。
税務署は、NISA口座への入金履歴や、マイナンバーに紐付いた所得情報を照合できます。
特に、将来どちらかが亡くなり相続が発生した際、過去10年以上にさかのぼって預金移動を調査され、「名義預金(実質的には夫の財産)」として相続税の対象になったり、過去の贈与税の無申告を指摘されたりするケースがあります。
(出典:国税庁『贈与税がかかる場合』)
新NISAを夫婦で行う際の正しい資金管理と贈与税対策

贈与税のリスクを回避し、堂々と夫婦のNISA枠を埋めていくためには、以下の3つの対策を組み合わせることが有効です。
対策1:生活費の負担割合を調整する
妻にもある程度の収入がある場合、夫が家賃や食費などの「生活費」を全額負担し、妻の給与を全額妻自身の「投資資金」に回す方法は合法です。
夫婦には互いに生活を扶助する義務があり、生活費の負担は贈与にあたらないからです。
これにより、間接的に妻の投資余力を生み出せます。
対策2:年間110万円以下の贈与に留める
夫の資金を妻に移す場合、その額を年間110万円以内に抑えます。
月額9万円(年108万円)の積立であれば、贈与税はかかりません。
これを超える分は、妻自身の独身時代の貯金などを使います。
対策3:贈与契約書を作成し、証拠を残す
どうしても年110万円以上の資金移動を行いたい場合は、正式に「贈与」の手続きを行います。
1 贈与契約書の作成: 「誰が(夫)」「誰に(妻)」「いつ」「いくら」「どうやって(振込)」あげるかを記載し、双方が署名・捺印します。
2 銀行振込の実行: 手渡しではなく、通帳に記録が残る振込で行います。
3 贈与税の申告・納税: 妻が翌年の確定申告時期に贈与税を支払います。
あえて税金を払ってでも資産を移転させ、NISAの非課税メリット(将来の利益が非課税)を取りに行くという高度な戦略です。
ただし、手間とコストがかかるため、専門家への相談を推奨します。
【運用戦略】新NISAを夫婦で3600万円のポートフォリオの最適化と夫婦間の合意形成

口座とお金の準備ができたら、いよいよ運用の「中身(ポートフォリオ)」を決めます。
夫婦2人分の枠がある強みを活かし、効率と安定、そして「楽しさ」を両立させる戦略を立てましょう。
また、運用方針について夫婦間で意見が割れることはよくあります。
長期投資を成功させる鍵は、実は銘柄選びよりも、夫婦のコミュニケーション(合意形成)にあります。
積立NISAは夫婦で同じ銘柄にするべきか分散するべきか

つみたて投資枠では「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」連動型の投資信託が圧倒的な人気です。
夫婦で運用する場合、これらを全く同じにするか、分けるべきか悩みどころです。
基本戦略:コア資産は揃える
資産形成の核(コア)となる部分は、夫婦ともに王道のインデックスファンド(全世界株式など)で揃えるのが無難です。
なぜなら、世界経済の成長を取り込むという最適解において、夫婦で差をつける合理的理由が少ないからです。
同じ銘柄なら、値動きの話題も共有しやすくなります。
応用戦略:リスク許容度で調整
もし「夫はリスクを取れるが、妻は保守的」という場合、以下のように調整します。
●夫:S&P500(米国株集中でリターン追求)
●妻:全世界株式(カントリーリスク分散)またはバランス型ファンド(債券含みで変動を抑制)
ただし、全く同じ銘柄を保有することは、特定のリスク(例:米国市場の暴落)を家計全体で真っ向から受けることを意味します。
この点を理解した上で選択しましょう。
新NISAを夫婦で使い分けるコア・サテライト戦略の具体例

夫婦で2つの口座、合計4つの枠(つみたて×2、成長×2)を持つメリットを活かし、「コア・サテライト戦略」を取り入れるのがおすすめです。
「コア(核)」は守りの資産、「サテライト(衛星)」は攻めや楽しみの資産として役割分担します。
配分比率の目安:コア70%から80%、サテライト20%から30%
■具体的な役割分担の実例
夫の口座(鉄壁のコア):
つみたて投資枠も成長投資枠も、すべて「全世界株式インデックス」で埋めます。
面白みはありませんが、将来の老後資金や教育費として、市場平均点のリターンを確実に狙います。
妻の口座(彩りのサテライト):
つみたて投資枠はインデックスで守りつつ、成長投資枠を使って「高配当株ETF(VYMなど)」や「日本の高配当個別株」「株主優待銘柄」を購入します。
メリット: 年数回、配当金という「お小遣い」が入ったり、優待品(食品や食事券)が届いたりします。
数字上の効率だけを求めるとインデックス一択になりますが、長期間の投資には「退屈さ」という敵がいます。
サテライト枠で「今の生活が少し楽しくなる」要素を取り入れることで、投資への関心を維持しやすくなり、結果として継続率が高まります。
投資に対する温度差やリスク許容度のズレを埋めるコツ

「夫は投資に前のめりだが、妻は元本割れを極端に怖がる(あるいはその逆)」という温度差は、多くの家庭で火種になります。
このズレを解消せずに強引に進めると、暴落時に「だから言ったのに!」と夫婦喧嘩になり、最悪の場合、底値で解約させられる事態になります。
解決のヒント1:論理より感情に寄り添う
投資に消極的なパートナーに対して、過去のデータや利回りのグラフを見せて論破しようとするのは逆効果です。
不安の根源は「よくわからないものにお金が消える恐怖」です。
まずは少額(月5,000円など)から始め、「増減しても生活に影響がないこと」を体感してもらう時間を設けましょう。
解決のヒント2:目的(夢)を共有する
「お金を増やすこと」自体を目的にせず、「増えたお金で何をしたいか」を語り合いましょう。
「10年後に家族全員でオーロラを見に行きたい」「子どもが留学したいと言ったら即答でOKしたい」といった共通の夢があれば、投資はそのための「手段」に変わります。
夢の共有こそが、リスク許容度のズレを埋める最強の接着剤です。
定期的な資産状況の共有と目標の再確認

投資は「設定して終わり」ではありません。
年に1回から2回は夫婦で「マネー会議」を開催し、メンテナンスを行いましょう。
マネー会議のアジェンダ例:
1 総資産の確認: 銀行預金、保険、NISAの合計額をチェック。
2 進捗確認: 目標(ロードマップ)に対して順調か、遅れているか。
3 比率の確認(リバランス): 株価が上がりすぎて、資産全体のリスクが高まりすぎていないか。
必要なら一部売却して現金比率を戻す。
4 暴落時のルールの再確認: これが最も重要です。
「もし来年、資産が半分になっても、絶対に積立を止めない」「むしろ安く買えるチャンスと捉える」という約束を、平時の冷静な時に交わしておきます。
【将来の備え】新NISAを夫婦で3600万円の出口戦略と万が一のリスク管理(離婚・相続)

投資は「入口(積立)」よりも「出口(取り崩し)」の方が難しいと言われます。
3,600万円を貯めた後、それをどのように使い、守っていくのか。
そして、離婚や相続といった「万が一」の事態にどう備えるか。
輝かしい未来のための出口戦略と、直視したくないけれど避けては通れないリスク管理。
この両面を知っておくことが、30年以上の長期投資を続ける「真の安心感」につながります。
【出口戦略】3600万円達成後の取り崩しと不労所得の作り方

資産形成の最終ゴールは、通帳の数字を増やすことではなく、そのお金を使って人生を豊かにすることです。
3,600万円の枠を埋め切った後は、運用を続けながら少しずつ取り崩す「収穫期」に入ります。
戦略1:4%ルールによる定率取り崩し
米国のトリニティ大学の研究に基づく有名な手法です。
「資産額の4%ずつを毎年取り崩しても、運用益と相殺されて、資産が枯渇する可能性は極めて低い(30年後も残っている確率が高い)」という理論です。
3,600万円 × 4% = 年間144万円(月12万円)
毎月12万円の「自分年金」を受け取りながら、元本を維持できる可能性があります。
暴落時には取り崩し額が減るため、資産寿命が延びる仕組みです。
戦略2:配当金生活(インカムゲイン重視)
成長投資枠で構築した「高配当株」からの配当金を受け取り続ける方法です。
3,600万円 × 配当利回り4% = 年間144万円(税引前)
新NISAなら国内株の配当金は非課税です。
元本を取り崩すことに心理的抵抗がある人に向いています。
「資産そのものには手を付けず、そこから生み出される卵(配当)だけを食べる」感覚なので、精神衛生上非常に楽です。
戦略3:キャッシュ・クッションの活用
株式市場が暴落している時に資産を取り崩すと、資産寿命を一気に縮めてしまいます(シーケンス・オブ・リターン・リスク)。
これを防ぐために、暴落時はNISAを取り崩さず、手元の現金(生活防衛資金とは別の現金バッファ)を使って生活します。
相場が回復したらNISAからの取り崩しを再開します。
このための現金を、リタイア直前に準備しておくことが重要です。
離婚時の財産分与でNISA口座の資産はどう扱われるか

縁起でもない話ですが、日本の離婚率は約3組に1組です。
離婚時のトラブルを防ぐためにも、NISA資産の扱いを知っておく必要があります。
原則:NISA資産も財産分与の対象
NISA口座の名義は「個人」ですが、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた資産は「共有財産」とみなされます。
したがって、離婚時には原則として2分の1ずつ分ける対象になります。
実務上の注意点
NISA口座内の株式や投資信託を、そのまま相手の口座へ「非課税のまま」移すことはできません。
NISA枠は譲渡不可能です。
実務上は以下の手順になります。
1 基準時(別居時または離婚成立時)の評価額を確定する。
2 方法A(売却): 全て売却して現金化し、それを折半する。
3 方法B(代償分割): 運用を続けたい側(名義人)が、相手の取り分に相当する現金を自分の貯金から相手に支払う。
特に方法Bの場合、手元に多額の現金がないと成立しません。
また、婚姻前(独身時代)から持っていた資産は「特有財産」として分与対象外になりますが、それが混ざってしまわないよう、独身時代の通帳などは大切に保管しておく必要があります。
相続発生時の手続きと新NISA口座の注意点

もし配偶者が死亡した場合、NISA口座内の資産は相続財産となります。
ここで最も誤解されやすいのが非課税枠の扱いです。
重要:故人の非課税メリットは消滅する
亡くなった人のNISA口座を、相続人がそのまま引き継ぐことはできません。
相続人が資産を受け取る場合、その資産は相続人の「特定口座(課税口座)」または「一般口座」に移管されます。
(※相続人が新たに自分のNISA枠を使って買い直すことは可能です)
移管される際の価格は「死亡日の時価」となります。
つまり、故人が安く買って大きく値上がりしていた場合、その含み益に対する税金はリセット(精算なし)された状態で引き継げるため、相続時点では有利です。
しかし、それ以降の値上がり分には通常通り税金がかかります。
事前の対策
万が一の際にパートナーが路頭に迷わないよう、「どこの証券会社に」「どんな資産が」「ID・パスワードの保管場所(またはエンディングノートの場所)」にあるかを共有しておくことは、愛する人への最後の責任です。
【まとめ】新NISAを夫婦で3600万円について
最後に本記事で重要なポイントをまとめます。

